東洋的でありながら西洋的でもある、独自のノスタルジックな雰囲気を持つデザインでコアなファッションフリークから支持を得ているZIGGY CHEN。
デザイナーZIGGY CHEN氏に行なったインタビューのプレビュー版として、ブランドの近況やそのデザインの背後にあるインスピレーションや哲学について語っていただいた部分の一部を抜粋して公開します。
---23-24AWから再びパリでコレクションを発表しました。
母国ではまだコロナウイルスの影響が続いているかと思いますが、コロナウイルス(COVID-19)がデザイナーとしての仕事にどのような影響を与えましたか?
ネガティブな側面とポジティブな側面の両方があれば教えてください。
ZIGGY : もちろん様々な影響がありました。ネガティブな側面は普段の仕事のリズムが大きく狂ってしまったこと、原材料や燃料費の高騰によるコストの上昇と、サプライチェーンの各段階における遅れなどによって製作に大幅に遅れが出てしまったことなど挙げればきりがありません。
ポジティブな影響は、ロックダウンにおいて家族との時間が増え、普段の生活についても考える時間が増えたことや、ワークライフバランスを見つめ直すきっかけになったこと、そして多くの人がこの世界と如何にして共存していくかということについての関心を高めたことにあると思います。
---ファッションの聖地とも言えるパリの舞台に戻り、改めて感じたことはありますか?
ZIGGY : 約三年にも及ぶ紆余曲折を経て、パリに帰ってくることはとても感慨深いものでしたし、嬉しかったですね。常態化しつつあった焦慮する日々が嘘だったかのように、生活と仕事が突如として元に戻った感覚がありました。
---洋服を製作する上で、思い描く男性像はありますか?
ZIGGY : 過去の物事を知ることは自分の趣味のようなもので、歴史や建築、古い写真や絵画などは全てとても素晴らしい情報源になります。
荘厳華麗な博物館に収蔵されているものもあれば、玉石混交の蚤の市に埋もれているものもありますが、これらのモノは共通して、今の時代を生きる我々には目にすることの出来ない美しさを持ち合わせています。
自分自身の審美眼は、過去の物事を理解することと、時代を超えて存在するモノを好くという点を中心に形成されているのだと思います。
なのでこれらの要素を取り入れることは自分にとってとても自然で当たり前の事であり、自分自身の生活の延長線上にあるものです。あくまでも自然に派生してきたもので、思想や理念というのはありません。
---あなたの作品は構築的な観点と、脱構築的な観点の両面のバランスが非常に優れていると感じています。 この点において、創作に対する思想はどこから来るのでしょうか。
ZIGGY : 服作りにおけるパターンやディテールの多くのインスピレーションは幾度も使用され、変形し、壊れかかったような道具や、陶器、テキスタイル、家具などから来ています。
自分ではあまり構築や脱構築の観点から考えることはなく、ただ再構築的な側面はあるかもしれません。
自分自身が伝えたいのはやはり長い年月使われたことによって生じるモノの変形と破損感ですね。
---あなたの作品は衣服の外側と同じように内側にも多くの労力が費やされ、非常に綺麗に作られています。
以前のインタビューでは、ライカのカメラのように目に見えない部分までディテールにまで拘ったものを作り上げたいとおっしゃっていましたが、作品のクオリティに対するこだわり、あるいはそれを達成するための情熱はどこから来るのでしょうか。
ZIGGY : 大量のアンティークやヴィンテージの服を参考にしました。
特に17世紀、18世紀の東洋西洋両方の服が好きで、現代人には到底作りえないレベルのディテールとテクニックがありました。
これらの服が自分にとっては服作りにおける教育でした。クオリティーに対するこだわりと情熱に関しては、生まれつきのものかもしれませんね。笑
---あなたのコレクションにはリバーシブルの作品、もしくはリバーシブル仕様でなくてもそのように着用できるレベルの作品が多く見られます。
内側からの美しさをクリエイションに取り入れたいというインスピレーションについて教えていただけますか?
ZIGGY : 自分にとって、いい服とは必ず表裏一体なモノです。表裏に関わらず美しくあることは、服を着た時に、自分と服の関係性や感情を更に深める要素だと思っています。
---デザイナーとして何年にもわたって創作を続けてきた中で、 自身の中で変化したこと、あるいは変わっていないところはどんなところですか?
ZIGGY : 『この世で変わらないのは、変わると言うことだけだ。』という言葉にあるように、人とは常に変化し続けるものです。
もし変化がなければ、この仕事は自分にとって何の意味もなくなってしまうと思います。
しかし自分自身の価値観と審美観に大きな変化はありません、ただその土台の上に少しづつ新たな領域が増えていっているだけだと思います。
同時に、自分達の作った服を着てくださる方々からのフィードバックは以前よりも更に積極的に耳を傾けています。
なぜなら服は視覚的に美しいだけでは成り立たず、着心地の良さがとても重要な要素だと考えるからです。
---ZIGGY CHENは当店でも常に一定のファンを獲得し続けているブランドの一つです。
日本のZIGGY CHENファンに向けてメッセージや何か伝えたいことはありますか?
ZIGGY : 『まず日本の皆さんに自分達の服を着てもらえるのは単純にとても嬉しいですね。
自分自身が若かったころ、80年代の日本人デザイナー達にはとても衝撃を受けたのを覚えています。
日本に来るたびに、皆さんのファッションへの情熱の高さに驚きますし、それぞれが自分のスタイルを持っているように感じます。
そんな日本のメンズウェアのマーケットは世界で最も成熟したマーケットで、国内にも素晴らしいデザイナーが数多くいる非常に厳しいマーケットです。
そこで自分達の服に興味を持ってもらえるのはとても光栄ですし、大きな刺激になっています。
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